前世で米を炊いて、城壁の海に立っていた
私には前世の記憶が幾つもある。
今回は、その中から幾つか話そうと思う。
個人的に一番気に入っているのは、武田信玄の館で女中をしていたときの前世だ。
武田家での女中の記憶
私も前世視で知ったのだが、当時の武家屋敷というのは、一般的なイメージにあるような日本のお城ではなかった。
広い平屋の造りをしていて、ただの日本屋敷といった佇まいだ。
当時、私はそこの女中として働いていた。
その中でも台所で働いていて、米を炊くのが私の務めであり、庭の井戸でざるを使って洗った米を土間の窯で炊いていた。
ところが、そこから出火してしまって、屋敷をまるまる一棟焼き尽くしてしまった。
私は他の人々とともに逃げ延びたが、誰が犯人かは、ついに最後まであやふやなままだった。
それを見たとき私は、嘘だ〜と思った。
自分はあまり歴史に詳しくないこともあって、お殿様が住んでいるところ=お城というイメージがあった。なのに平らな家だし、それに呼び方だって、殿とかではなく「おやかたさま」だった。
その「おやかたさま」も、ここだけの話、なかなか女々しいというのか細かい性格だった(笑)
たまに館に居るときは、堂々と姿を表すわけでもなく、まずは物陰に隠れて使用人たちが働いているか、コソコソと覗き見するような人物だった。だから、そこで働いている人たちは、この「おやかたさま」がどうにも苦手で、居るときは空気がどことなくピリついていた。
そして、そのような気質に反して、体型は小柄ながらも骨太で大きくガッチリとしていたと思う。
そして、屋敷を燃やした事だって、戦で燃えたりなんかしないと不自然なんじゃないかと思って、また適当な幻覚を見たなあと思ったものである。
ところが後日、武田信玄の資料館へ行く機会があって、そこで本当に謎の出火でまるまる燃えた屋敷の存在があったことを知って、思わず笑ってしまった。
これが本当なら、とんでもないスケールのドジをやらかした前世ということになるが、だからこそ、ちょっとした私のお気に入りになっている。
次は、印象的だった前世の話だ。
コンスタンティノープルの記憶
その記憶の中では、大砲によってすでに城壁があちこち崩れていた。
すぐそばに海があり、夕焼けで真っ赤に染まっていて、とても美しい情景だった。
海辺だが砂浜などがあるわけではなくて、石造りの平らな地面だった。
私は貴族の婦人で、使用人らしき女性とともに、今から出陣する夫を見送るところだった。
夫は馬にまたがっており、最後に抱き合って見送ったが、情熱のようなものはなくて冷静だった。
夫婦関係も、恋や愛といった情熱的なものではなくて、家を守るための仲間・戦友といった感覚で、落ち着いたものだった。
政略結婚だったが、それに対する不満を感じたことはまったくなかった。
そうすることが当たり前だったし、安定した関係性だっため悪いものだとは少しも思っていなかった。
自分が身につけていたドレスの形を覚えている。
あの腰でくびれて大きく広がるような、ヴィクトリアンスタイルのようなものではなくて、腰はタイトになっていてスカートもボリュームはあるが、まだ全然、常識的な広がり方だった。緑色のドレスを着ていた。
それで、その海の景色が物悲しくも本当に美しく、透明感のある揺れる波に反射する夕焼けの色などが印象的で、ボロボロのあちこちが瓦礫のようになった城壁の様子も相まって、むしろ美しさを引き立てていた。
前世を見るとき
自分が前世を見るときというのは、多くは瞑想によるものだ。
人生の全体が見えるわけではなく、印象深かった場面や感情が、そのシーンだけを切り抜いたかのように見えて感じる。
興味があるなら詳しく見ることも可能だとは思うのだが、ほとんどは深堀りしない(深堀りしたいとはそれほど思わない)から、切り抜いたように記憶に残る。